こんにちは、スタッフ野田です。
早川工房のご紹介(その2)をお送りします。

前回キュー製作に使用する銘木材をご紹介しましたが、今回はそれを加工する過程を見ていきましょう。
まずは、角材を削って丸棒にしていきます。
その加工をするのがこの旋盤です。

この旋盤はバット用の太い材料を削るためのもので、工房の中でも最も大きな旋盤です。
すでに角材がセットされています。
これを削るのですが、一気に必要とする太さに削るのではなく、少しずつ段階を経て削っていきます。
これは材料に大きな熱や力がかかることを防ぐためで、こうしないと曲がったり割れたりする可能性が高くなってしまうのです。

角材を削っているところです。
黒いカバーが付いているので見えないのですが、この内部で切削用の刃が高速回転しています。
これが回転する材料を削りながら台座ごと少しずつ右から左へ動いていきます。
カバーの右側に見えている角材は四隅の角が削られており、さらに少しテーパーが付いていることもお分かりいただけると思います。
右端からだんだん削る量が多くなっている、つまり左に行くほど細くなるように削っているということです。
この材料はフォアアーム用ですので、後の工程で左端にはジョイントが取り付けられることになります。
こちらはシャフトを削り出す旋盤です。

これは動きをコンピュータ制御できるCNC旋盤で、テーパーの調整が自由にできるほか、切削用の刃を交換することによりインレイなどの切り出しもできるものです。
写真は作業中のもので、シャフト材をゆっくり回しながら高速回転している刃を左右に移動させながら削っています。
フォアアーム用旋盤と同様の工程ですが、シャフトは長く細いのでさらに多くの段階を経て削り、材料に無理な力が加わらないようにしています。
早川工房ではシャフトの製作は1mm削っては半年ほど寝かせるという作業を繰り返しており、完成するまでに5年ほどの時間がかかります。
そのため、工房内には多くの製作途上のシャフト材が保管されています。

殆どのキューメーカーは、製作途上のキュー(シャフト・バット共に)を曲がりを防ぐために
写真のようにぶら下げて保管しています。
皆さんも可能ならこのようにキューをぶら下げて保管するようにしてもらえば、曲がりを防いだり
曲がったキューを直す効果が期待できますので、試してみてください。
キューショップではぶら下げるためのキューハンガーという道具を販売しています。
5色のバリエーションがありますので、お好みの色をどうぞ。

キューハンガーはこちら

こんなにたくさんのシャフトが必要なんだろうかと思った方がいらっしゃるかもしれませんが、木という自然の材料を使うためにどうしても作成途上で不良(節や空隙、曲がりなど)が出て、製品として完成するまでに半分以上は廃棄されてしまうのです。
さらにシャフトの別売りもしているので、これほど多くのシャフト材が必要になるわけです。

これはシャフトの曲がりをチェックするものです。
ローラーの上でシャフトを転がして状態を目視でチェックします。
原始的な方法のようですが、実は熟練職人の見る目というのは精密機械以上に厳しいもので、例えば高級ライフル銃のメーカーでは、銃身のチェックを職人が目視で行なっていたりします。
ちなみにキューを大量生産するメーカーでは必要な生産数を確保するために一度に5~10本ほどのシャフトを削り出す特別製の旋盤を持っています。

さて、丸棒状態になったバットの材料に対して次に行う加工は芯材の挿入です。
これにより重量・バランスの調整、曲がり防止、剛性の強化などができます。
こちらが、芯材を入れる穴をあけるための旋盤です。
操作ハンドルに的球を付けているという遊び心がイイですね。

水色に染色されたスタビライズウッドに芯材用の穴をあけているところです。
ドリルを固定して、材料の方を回して穴をあけます。
まず細い下穴をあけてから3段階に分けて少しずつ広げていきます。
芯材の直径は19mmあるのですが、一気にこの大きさの穴を開けようとすると材料に大きな力と熱が加わって曲がったり、木口(こぐち)と呼ばれる切断面から割れたりする危険があるのです。
最後にガンドリルと呼ばれる特殊なドリルの刃を使って仕上げをします。

この写真で旋盤にセットされているのがガンドリルで、
グレーのチューブが取り付けられていますが、これは削り粉を吸い込む集塵機です。

ガンドリルの刃です。
先端に穴が2つあいており、ここから圧搾空気を噴出させて削り粉を吹き飛ばしながら削ります。
根元部分に赤いチューブが接続されていますが、ここから圧搾空気を注入しています。
写真の右下の方に圧搾空気を送り出すコンプレッサーがあります。
穴をあけ終わった材料と、色々な太さのドリルの刃も見えますね。

材料にあけた穴の様子です。
ここに芯材を通して接着すると、下の写真のようになります。

前述の通り必要に応じて色々な種類の芯材を使い分けています。
この写真ではメイプルとパープルハートが使われた例を示しています。

このようにして作られたバット材が所狭しと保管されています。
スタビライズウッドを使用したものもたくさんありますね。
フォアアームと同じ材料で製作されたバットスリーブとペアとなっているものもあります。

今回はここまで。
次回は早川工房独自の工夫の一つ、BORONを組み込む様子などをご紹介します。

キューショップジャパンでも早川キューの取り扱いをしております。
同じ杢目のキューは2本となく、すべてが1本物とも言える早川キューをご覧ください。

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自慢のマイキューをこちらのページに掲載ご希望の方は、キューショップジャパンLINEで直接写真を添付送信ください。キューショップLINEはこちら
必要な写真は以下の4点となっております。

①全体 ②フォアアーム ③バットスリーブ ④ジョイント

※写真角度などは紹介されているキューをご参照ください。
※お客様のこだわりや自慢のエピソードなどもございましたら、是非メッセージご記入をお願い致します。

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