フロリダのキューメーカー、クリス・ニッティのキューです。
1992年に最初のキューを製作したとのことなので、もう30年以上のキャリアがあります。
これはスタッフ野田が2016年にスーパービリヤードエキスポのニッティ・キューのブースを訪れた際の写真です。一緒に写っているのが製作者のクリス・ニッティです。
彼と初めて会ったのは1997年で、その時はバラブシュカを手本としたデザイン・性質のキューでしたが、9ボールや10ボールが主力となる現代のキューに求められる性能、デザイン、そして汎用性などについて私から色々提案をして、現在はそれらを取り入れたものになっています。
フォアアームです。
少し虎斑模様の入ったバーズアイメイプルに長短3本ずつのハギが入った親子6剣デザインです。
長短のハギにはそれぞれ黒檀の縁取りベニヤがついています。
これはスタッフ野田がニッティ・キューの工房を訪れた際に撮った写真です。
クリスが手にしているのはブランク、つまりフォアアームとなる部品で、ハギを取り付けるくぼみに縁取りベニヤを入れる様子を示しています。
この写真から分かるように、ニッティ・キューは基本的にショートスプライス工法で製作されており、ハギの先端をできるだけシャープにするように心がけています。
バットスリーブです。
黒檀ベースで、大きな楕円のインレイが目を引きますね。
ニッティ・キューではこういった楕円形のインレイが大きなアピールポイントになっているものが多いです。
楕円形のウインドウの中にはスピアヘッドのインレイが2つ入り、楕円インレイ間には星形のインレイが施されています。
これはコンケイブドダイヤ(曲線ダイヤ)と呼ばれるデザインを更に高度にしたもので、強い角度のついた曲線で構成され、先端が尖っているので高い工作技術が必要なインレイです。
フォアアームに入れられた手書きサインです。
製作者名「Nitti」と製作年度「2000」が書き込まれています。
現在は年号の後にシリアルナンバーがつけられて個体識別が容易になるようにしています。
この写真を見ると長短のハギで付けられている縁取りベニヤの厚さが異なることがよく分かります。
これにより全体的にメリハリの効いた引き締まったデザインになるようにと考えているのです。
こういったことは沢山のキューを見て、研究して、製作してみて実感できる感覚だと思います。
ジョイントです。
フラットフェイスのラジアルピンが採用されています。
1997年当時はバラブシュカを手本としていたために14山のパイロテッドでしたが、汎用性と時代の要望から現在ほとんどのニッティ・キューはラジアルジョイントを採用しています。
またシャフトのカラーとジョイントリングは白のステッチリングで、特別製のもの以外はすべてこのリングがつけられており、加えてジョイント部分の直径も特注で指定されない限りすべて同じになっています。
これによってニッティ・キュー同士であればシャフトの互換性があり、追加でスペアシャフトを製作する場合でも、サイズ合わせのためにバットを必要としないのです。
創意と工夫にあふれた世界にこれ1本というプレミアムカスタムキューは、製造本数が少ないだけになかなか「これだ!」というものに出会えませんが、それだけにお気に入りの1本が手に入れば大きな満足を与えてくれます。あなたも自分の趣向にぴったり合ったものを探してみませんか?