スタッフ野田です。
スーパービリヤードエキスポのご紹介その2です。
このイベントはアレン・ホプキンスが企画運営しているもので、1993年からコロナのパンデミックで中止となった2020年を除き、毎年開催されています。
ちなみにアレンは優れたプロプレーヤーであり、全日本選手権で14-1ゲームが採用されていた頃、来日・参戦して決勝戦で100点を1キューで撞き切って優勝したことがあります。
現在の開催場所はペンシルベニヤ州の州都フィラデルフィアの郊外にある、GREATER PHILADELPHIA EXPO CENTERで、225,000平方フィート(約2万平方メートル)の広大なスペースに180以上の出展ブースと200台もの7フィートテーブルを使用したトーナメントエリア、さらにプロアリーナや飲食スペースなどを擁する巨大なイベントです。
トーナメントは、プロ・アマのオープントーナメントの他、女子、12歳以下、17歳以下、50歳以上、65歳以上の各カテゴリー別に分かれており、多くの人が楽しめるようになっています。
それでは前回に続いてキューを扱うブースをご紹介していきましょう。
Joss Cues のブースです。
ダン・ジェーンスとビル・ストラウドによって創設されたメーカーで、二人とも後にACA(アメリカ・キューメーカー協会)の殿堂入りするほどの名職人でした。その後ビルは独立してジョスウエストキューとして自らのキューブランドを立ち上げました。
残念ながらどちらもすでに故人となってしまい、ジョスウエストは後継者がなく消滅してしまいましたが、ジョスはダンの息子ステファンが作り続けています。
隣にはマイク・カポーンが製作するカポーン・キューのブースがあります。
Jersy Custom Cue Sales のブースです。
名前の通り、ニュージャージー州にあるキューやケースなどを販売する会社です。
隣接する M&N Custom Cue Sales もキュー販売の会社で、いわばライバル会社なのですが、アメリカではこういったキューディーラー同士で商品をやり取りすることもよくあるのです。
Jacoby Custom Cues のブースです。
創業者のデビッド・ジャコビーは昨年7月に75歳で死去し、現在は息子のブランドンが引き継いでいます。
年間1,000本以上製作するメーカーで、高品質なキューを比較的安価で提供していますが、一方で超絶技巧を凝らしたキューをエキスポのキューコンテストに出品しています。そのキューについては後ほどご紹介します。
Jerry Olivier Hand Crafted Custom Cues のブースです。
中央に立っている格子模様のシャツを着ている人が、製作者のジェリー・オリビエです。
ジャコビー同様、比較的安価な価格でバラエティに富んだデザインのキューを製作しています。
Doug Beasley Custom Cues です。
ダグ・ビーズリーはノースカロライナ州のキューメーカーですが、日本ではあまり知られていないと思います。
10年位前からアメリカで名前が知られるようになったメーカーで、高品質のキューを作るメーカーとして評価されているようです。
Cohen Cues のブースです。
エディ・コーエン(右の緑のシャツを着ている人)が製作しているキューです。
伝統的なデザインを踏襲しているキューが多く、スタッフ野田の好みのスタイルです。
Cornerstone Custom Cues のブースです。
コーナーストーンはメーカーではなく、高額なプレミアム・カスタムキューの取り扱いを主とするディーラーです。
見るだけでも目の保養になるようなキューが展示されています。
Carl Giuili Custom Pool Cues のキュー展示です。
スタッフ野田はこのメーカーを知りませんでしたが、2019年からキュー製作を始めた比較的新しいキューメーカーのようです。
エキスポ会場のある地元ペンシルベニア州に工房があるので、出展しやすいのでしょう。
バットキャップにメーカー名を示す特徴的なロゴが入っています。
Brent Summers Custom Cues のブースです。
展示されているキューはバットだけで、しかも全て半完成品です。
このメーカーはフルスプライス(いわゆる組み合わせハギ)を専門に作っているようで、展示されているバットは塗装はもちろん、ジョイントもバンパーも付いていません。
このバットに好きなジョイントとバンパー、そしてシャフトを組み合わせて自分好みのキューを作るというものです。
つまりプレーサーのようにキューメーカーに材料を提供しているというわけです。
バットの先端にジョイントピンのようなものが付いているように見えますが、これは保管時にバットを吊り下げておくためのフックなのです。
手前には色々なカラーベニヤが展示されていますが、これももちろんキューメーカーに供給するためのものです。
そこまで製作技術と材料が揃っているなら、材料ではなく完成品を売ればいいのにと思うのはスタッフ野田だけではないでしょう。
手前が Elliot Cues 、奥が Nitti Cues です。
Elliot Cues はDave Elliotが製作しています。
展示されているのはシンプルなデザインのキューがほとんどで、キューメーカーとしてまだこれから腕を上げていくところなのだと思います。
奥で椅子に座っている白シャツの人が Nitti Cues の製作者クリス・ニッティです。(ちょっと見づらいですが、隣に座っているのがデイブ・エリオットのようです。)
スタッフ野田はクリスの工房を訪問してキュー製作の様子を見たことがありますが、CNCを使わず手作業のみで精緻で複雑なデザインを施すことができる素晴らしい腕前を持ったキューメーカーです。
背後のバナーにElliott と Nitti 両方のメーカーの名前が印刷されていますが、実はデイブはクリスの娘ジェシカの旦那さんで、どちらもフロリダ州に工房があるので、きっとこの二人は協力しながらキューを作っているのでしょう。
Barnhart cues のブースです。
ウエストバージニア州のキューメーカー、コーリー・バーンハートが製作しているキューです。
キュー展示用ラックのデザインが面白いですね。スタッフ野田の好きなノッチドダイヤのインレイがデザインされているのがいいです。
バーンハートのキューはトラディショナルなデザインのものが多く、値段もそれほど高くないという印象があります。
カーボンシャフトが展示されているのはちょっと驚きました。少量生産のキューメーカーでもカーボンシャフトが必要になってくる時代になってくるのでしょうか。
さて、最後にご紹介するのは、エキスポ恒例となっているACA(アメリカキューメーカー協会)が主催するキューコンテストの展示です。
ACAメンバーのキューメーカーたちが腕によりをかけた一品を持ち寄って展示し、それを見た人に気に入ったキューに投票をしてもらい、投票数で賞を決めるという「People's Choice Cue of the Year」というイベントです。
今年の賞はこの3本に与えられました。
第3位が左側のエディ・コーエン、中央が第2位のジョー・ペシャウアー、そして右側が優勝したブランドン・ジャコビーです。
どのキューにもこれでもかと言わんばかりの精緻な装飾が施されており、製作するのにどれだけの労力と時間がかかったのか想像もできません。
他のメーカーが出展したキューの写真がなくて申し訳ないのですが、シンプルなデザインのキューを出展してくるはずはなく、こんなキューを毎年作って出展してくるメーカーは一体どうやって製作する時間を捻出しているのだろうと思ってしまいます。
受賞した3者に送られる盾です。
デビッド・ジャコビーとダン・ジェーンスの写真も飾られています。
この二人はどちらもACAの会長を何年も務めていました。
写真の横には、2024年度のACA殿堂入りキューメーカーとして、ゴードン・ハート(バイキング・キューの創設者)、ジェリー・マクウォーター、サムサラキューが選ばれたことが記載されています。
ご紹介した以外にもたくさんのブースがあり、日本からも前回ご紹介したナビゲーターの他、アダム、メッズ、スリーセカンズ、カムイ、ナオリーなどが出展しています。
冒頭にご紹介した7フィートテーブルを使用したトーナメントの他に9フィートテーブルのプロトーナメント(今年はジェイソン・ショウが優勝)もあり、プロの試合を間近で観戦できますし、会場内を名の知れたプロプレーヤーたちが普通に歩き回っており、サインや写真撮影を求めれば大抵は快く対応してくれます。
近年は円安と物価高でアメリカに行きにくくなっていますが、ビリヤード好きの人には天国のようなイベントですので、ぜひ一度は訪れてみることをスタッフ野田は強くオススメします。
スーパービリヤードエキスポほど大きくはありませんが、ビリヤードロサとプールラボに当社のプロショップがあり、たくさんのキューやビリヤード用品が展示販売されています。機会がありましたら足を運んでいただければと思います。
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