THOMAS WAYNE CUES
トーマス・ウェイン・キューです。
ベンダーと同じ、アラスカ州でキューを製作していますが、両者の間にあまり親交はないようです。
彼はもともと家具職人だったのですが、ナイフや宝飾なども手掛けた経験があり、特にナイフを作る腕前は相当なものだったようです。ナイフ製作と聞くと金属加工のように思われるかもしれませんが、グリップ部分には銘木が使用されることが多く、この細工の良し悪しがナイフ自体の価値を大きく左右するのです。
そんな彼がキュー製作に興味を持つのは必然だったと言えるかもしれません。また、キュー製作の基本を教えてくれる知人がいたこともあって、1980年代にはキューメーカーになる決心をしていたようです。
彼の技量はキューメーカーの間でも評判が高く、気が遠くなりそうなほど細かいインレイが無数にそして統率の取れた配置で入れられているキューを何本も製作しています。
また、彼はCNC旋盤のオーソリティとしても知られ、例えばジェリー・マクウォーターは彼からCNC旋盤の取り扱い指導を受けていました。
フォアアームです。
バーズアイメイプルにちょっと細身の親子6剣デザインです。
剣先のダイヤインレイも長細くてスマートな感じです。
このあたりにトーマス・ウェインらしさが出ています。
ハギのクローズアップです。
縁取りベニヤは入っていませんが、ハギの中にいれられたスピアヘッドのインレイには縁取りがあります。キューメーカーのちょっとした拘りが垣間見える部分です。
バットスリーブです。
黒檀の地にハギの中にあったインレイと、V字型とダイヤを組み合わせたインレイで構成されています。
V字型インレイをよく見ると、左右で重なり方が異なっている(右端は上のV字型が上になっていて、左端は逆になっている)のがわかります。単純に上のV字を入れてから下のV字を入れたりしたのではこのようにはなりません。どのようにしたらこのようなインレイができるか、おわかりになるでしょうか。
こんなよく見なければわからないようなところにも面倒な手間をかけるキューメーカーの拘りがあるのです。
トーマス・ウェインは特にその傾向が強いと思います。
ジョイントです。
ごく一般的な14山のパイロテッドジョイントです。
特製のジョイントキャップが付いています。
フォアアームに書き入れられたトーマス・ウェインのサインです。
ロゴマークなどはなく、フォアアームにサインが入っていることがほとんどです。
また、このキューのサインはペンで書かれていますが、これを金色の薄板で入れたキューもあります。
尻ゴム(バンパー)です。
GENUINE THOMAS WAYNE(トーマス・ウェイン純正品)の標記があります。
プレミアムカスタムキューメーカーといえども、尻ゴムまで独自のものを使っているメーカーはそれ程多くはなく、品質の安定しているものを他のメーカーと共通で使うことが多いのです。
独自の尻ゴムを作ろうとすると、その発注単位はかなりの数になります。少量になるほど単価が跳ね上がるため、年間に何千本も作る大手メーカーなら独自の尻ゴムを作ることが可能ですが、生産数の少ないプレミアムカスタムメーカーではそうはいきません。尻ゴムでキューの性能が上がるわけではないですからね。
それでもタッドやジナキューなどはオリジナルの尻ゴムを使っており、サムサラやデール・ペリーなどトーマス・ウェイン同様にメーカー名やロゴを入れた尻ゴムを使っているメーカーもあります。
キューショップジャパンには尻ゴムもいろいろあります。