こんにちは、スタッフ野田です。
本日のお題は「スタン・ラン・スルー」です。
いきなり難しそうな言葉が出てきて、「一体なんじゃそりゃ?」と思われた方も多いでしょう。
残念ながらこれを日本語訳した適当な言葉が見当たらないので、"Stun Run Through"をそのままカタカナ表記するしかなかったのです。
スタッフ野田の独断偏見的意訳をするなら「殺し押し」といったところでしょうか。
ではこれが何なのかを説明しましょう。
配置図をご覧ください。ゲームはナインボールです。
      ↓

1番はセンタースポットにあり手球はヘッドライン上でコーナーポケットに向かってまっすぐ並んでいます。
いわゆる「テセン」の配置です。
次の2番は下のサイドポケットに狙うしかないのですが、そのためには手球を下図の赤い範囲内に止めなければなりません。

あなたはこの1番をポケットする際にどのような撞点・力加減を使いますが?
誰でも考えつくのは、ゆっくり撞いて手球が1番にヒットしたあとにトロトロ~っと前に出ていく・・・というものではないかと思います。
ゆっくり撞くならどこを撞いても的球にヒットするまでには自然回転になってしまうので、あまり撞点に気を使う必要はありませんね。しかし、それゆえに的球をヒットしたあと手球をどれだけ前に出すかをコントロールすることはできなくなってしまいます。
さらに、テーブルを対角線で横切るこのような長距離をスローショットで撞くのが危険であることは、中級以上の方ならご存知でしょう。
国内のビリヤード場の多くはテーブルの整備が行き届いているので、長距離をゆっくり転がしても球はまっすぐ走ってくれますが、それでもラシャの傷んだ部分やチョーク屑などによってコースが変わってしまう可能性があるのです。
複合アミューズメント施設に設置されているテーブルなどではあまりメンテナンスされていない場合もあり、水平でなかったり石板の段差があったりするものを見かけることがあります。
プールの本場アメリカでも日本ほどにはテーブルコンディションに気を使っていない場合が多いのです。
スタッフ野田が2000年にUSオープン(バージニア州のチェサピークで行われました)を見に行った際に、驚いたことがあります。

2000年USオープンの試合会場です。エフレン・レイズがラックしているところです。ルドルフ・ルアットの姿も見えますね。テーブルはすべてブランズウイックです。

USオープンは一週間ほどかかる長丁場のトーナメントですが、試合が進むと使用するテーブルの数が少なくなってくることと決勝戦用のテーブルを設定する必要から、一部のテーブルを撤去&配置変更を行なっていました。
その際にテーブルを移動するのにジャッキ台車で丸ごと持ち上げて移動先にドスンと下ろしてハイ終わりという状態でした。
特に水平のとり直しなどをする気配もないので、スタッフ野田は心配になって移動したテーブルで球を転がしてみたのですが、案の定ちょっと片側にヨレていました。
その場にいた運営の人に「これ、水平が狂ってるよ」と言ったのですが、返ってきた言葉は「対戦者は二人とも同じ条件でプレーするからいいんだよ」でした。(XoX)

さて、スローで撞くのでなければ一体どうするかですが、ここでスタン・ラン・スルーというテクニックが登場します。
これは力加減は一定にして、撞点の変化で手球の前進距離をコントロールするというものです。
まず「テセン」の配置で、ストップショットで最も的球を入れやすい力加減と撞点を決めます。
次に同じ力加減で撞点を少し上げてみてください。当然ながら的球にヒットしたあと手球は止まらずに少し前へ進みますね。これがスタン・ラン・スルーで、力加減を変えずに撞点の変化で手球の前進距離を調整します。
これならば手球・的球ともにそれなりのスピードで転がっていくので、テーブルの影響でコースが変わる危険を少なくすることができ、なおかつ手球が前進する距離もコントロールできるというわけです。

これ、説明は簡単なのですが、実際に使いこなすにはかなりの練習が必要な高等テクニックです。
まず基準となる力加減と撞点でいつでも撞くことができなければなりません。
このショットを使用する機会というのはそれほど多くはないので、いざ必要となった際にそれが再現できるかどうか?
そして手球を動かしたい距離に応じて撞点を細かく正確に撞きわける必要があります。
さらにラシャやボールのコンディションによって手球の走り具合が変化するため、これを考慮して調整しなければなりません。
難しいショットなので実際に使用するには充分な練習と勇気(度胸?)が必要です。
これは色々なコンディションのテーブルで試合をしなければならない全国的あるいは世界的レベルでのトーナメントを目指す人達にのみ必要とされる技術なのかもしれません。
世界で通用するプレーヤーになるためには、テーブルが傾いていようがクッションの反発が変であろうが、いかなるテーブルコンディションにも対応できる能力が求められます。

ここでちょっと本題から脱線(また!)して、テーブルへの対応力を求められる例をスタッフ野田の経験からご紹介しましょう。
スタッフ野田はスーパービリヤードエキスポのアマチュアトーナメントに出場したことがあるのですが、この時試合に使われたテーブルは日本のビリヤード場で一般的に設置されている9フィート台より一回り小さい7フィート台というものでした。
下図はそのトーナメントで出くわした配置です。的球の配置はかなり昔の記憶なのでちょっとあやふやですが、1番から2番に出す場面です。
      ↓

①は上のサイド前で②は右下のクッション際にあります。
多くの人は左へ回して手球を下図のA地点へ持ってこようとすると思います。
      ↓

普通ならこれで正解のはずなのですが、スタッフ野田の対戦相手はこのように手球をポジションしました。
         ↓

逆ひねりで手球をそっと撞き、クッションから立たせてB地点に止めたのです。
それを見たスタッフ野田は「ポジションが下手だな」と思ったのですが、対戦相手は慎重に②を入れて見事にランアウトしました。その時スタッフ野田は相手をみくびっていたことに気付いたのです。
7フィートテーブルは9フィートに比べてプレーフィールドの大きさは小さいですがボールの大きさは同じなので的球間の間隔が相対的に狭く、よりシビアな手球のコントロールが要求されるのです。
手球を左に回した場合、⑦・⑥・⑤に当たってしまう危険と、②が③に隠れて見えなくなる危険が発生します。
この図で見る限りは、よほどのヘマをしない限りそんなことにはならないと思えるかもしれませんが、7フィートではトラブルが起こる可能性が増すのです。
一方、手球をB地点に止めておけば②が見えなくなる危険は皆無で、手球がクッションに近接しなければ②が多少薄くなっても7フィート台ならポケットすることはそれほど困難ではないのです。
7フィート台ではランアウトの確率が9フィート台より高く、相手にショットを与える(=ランアウト可能な配置を渡す)ことは致命傷となり、的球が見えなくなるという事態は何が何でも避けなければなりません。
台が小さいためにロングショットというものが少なくなるのですが、かわりに的球が見えなくなる可能性が増えるという危険をこの相手プレーヤーは熟知していました。おそらく普段からこのサイズのテーブルでゲームをしていて戦い方に慣れていたのでしょう。
彼は的球が遠くなったり薄くなることはあまり気にせず、必ず的球が見える安全圏に手球を運ぶことを最優先していたのです。
アメリカでは7フィートテーブルも多く設置されており、特にバーなどに置いてあるテーブルは大抵7フィートで、この台専門のプレーヤーやトーナメントも多いのです。
いつかアメリカでプレーしてみたいという人の参考になれば幸いです。

当社では設置が簡単で場所も取らない7フィートテーブルも販売しています。
ご自宅にちょっと広いスペースがあるという方、いかがでしょうか。

あなたのキューをMy Favorite Cueに掲載しませんか?

「My Favorite Cues」ページでは、皆様のお気に入りキューを紹介するページです。

自慢のマイキューをこちらのページに掲載ご希望の方は、キューショップジャパンLINEで直接写真を添付送信ください。キューショップLINEはこちら
必要な写真は以下の4点となっております。

①全体 ②フォアアーム ③バットスリーブ ④ジョイント

※写真角度などは紹介されているキューをご参照ください。
※お客様のこだわりや自慢のエピソードなどもございましたら、是非メッセージご記入をお願い致します。

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします

Twitterでフォローしよう

おすすめの記事