こんにちは、スタッフ野田です。
今日のお題は薄い球についてです。
意図的に薄めにポジションする場合もありますが、的球を入れるだけなら厚い方がポケットしやすいという意見に異を唱える人はいないでしょう。
一般的に言って薄くなるほどポケットすることが難しくなり、手球が大きく動くためにポジションも難しくなるからです。
では、なぜ薄い球はポケットすることが難しいのでしょう?
最大の理由は許容誤差が少ないことです。
薄くなると許容誤差がどれくらい変わるのか、下図の例でちょっと計算してみましょう。

ポケットビリヤード用ボールの直径を57ミリ、ポケットの開口部はその2倍の114ミリの範囲内に入ればOKとします。
的球はポケットから20cmの距離にあり、手球と的球の距離も20cmです。
実際に配置した写真を見ていただければお分りのとおり、まさにイージーボールを絵に描いたようなもので、ストロークがしっかりしていれば初心者でもまず外さない配置でしょう。

この配置で的球がポケットするために許される角度の許容誤差を計算してみると、左右15度ほどになります。


なお、分かりやすくするために、図では距離や大きさの比率が実際と異なっており、曲面や接点の部分など計算が複雑になる所は適当に省略していますが、結果に大きな影響はありません。
また、図では15度ずれたらクッションの角にぶつかってしまうのですが、前述の通りこれはポケットするものと想定してください。
数学が得意な方は、三角関数でこの角度が導き出されることがおわかりだと思います。
そして的球がこの範囲内に進むために、手球に許される許容範囲は左右2度ほどです。

こんな簡単な配置で甘いポケットを想定しても手球の許容誤差が左右それぞれ2度しかないのです。球をナメていいかげんなショットをすると簡単な配置でも外れる理由がここにあります。
また、コンビネーションショットがいかに難しいものかがこれでよく分かると思います。

さて、正面から狙ったときの許容誤差がわかったところで、これを薄くした時に
どうなるかを見ましょう。
手球の位置をずらして60度の角度をつけました。距離は同じで20cmずつ離れています。

実際の配置です。
角度が分かりやすいように、シューティングナビを置いています。

的球の位置は同じなので、手球が的球に接触すべき範囲は7.5mm×2=15mmです。
これでどれくらいの許容誤差があるかを計算してみると、結果は左右それぞれ1.2度ほどになります。正面からと比べるとほぼ半減するわけです。
しかも正面からの場合は15mmの範囲内がすべて狙えるのですが、角度がつくほど死角になる範囲が増えてしまいます。
極端な例を言えば、ほぼ90度の超薄切りカットをしようとした場合、的球上の狙える範囲15mmのうち手球から見て手前半分の7mmしか手球を当てることができなくなってしまうのです。
これで薄くなればなるほどこの許容誤差が少なくなるのがお分かりいただけると思います。

ちょっと横道にそれますが、距離も許容誤差に大きな影響を与えます。
よく練習に使われる「テセン」と呼ばれる、的球センタースポット、手球ヘッドライン上からまっすぐコーナーへ入れる配置があります。

この配置で的球に許される角度の誤差は0.6度ほどで、手球は的球の中心から左右0.5mm以内にヒットしなければならないのです。
大変な精度が要求されるショットですが、それでも上級者はこの配置で何十球も続けて入れることができます。訓練された人間の感覚というのは恐ろしいものです。
60度の角度がついた配置に戻りますが、これくらい薄くなると許容範囲が小さくなることの他に別の問題も発生してきます。それは的球とポケット間の距離が離れると的球を入れるべきポケットが構えたときに見えなくなるということです。
厚い配置なら構えに入っても常に的球とポケットの位置関係を視線を変えるだけで把握できるのですが、薄くなると的球に視点(狙い)を合わせるとポケットが視界に入らないため、狙いを確認する為には一旦構えを解かなければなりません。60度の角度で的球がポケットから40cmも離れていたら、そのような状態になります。
するとひたすら自分で狙った厚みが正しい事を信じてショットするしかなく、本当にこれで合っているのかという不安が起こります。
ポケットが見えていようがいまいが狙う所を感覚的に掴んでいればそんなことは関係ないはずなのですが、そこはそれ人間のすることですので心理的にマイナスに作用する要因になってしまうのです。
これは自分を信じることに慣れるしかありません。
このように薄くなるにしたがって難易度は加速度的に難しくなり、そして非常に薄いショットになるとさらに別の不安が発生します。それは「空振り」です。つまり手球が的球に当たらずファールになってしまうことです、
的球を90度近い角度で切る(フェザーカットと呼ばれます)では、的球に触れるか触れないかの紙一重のショットとなり、ファールを恐れてどうしても厚めになってしまうことが多いのです。
これを防ぐために手球と的球が近い場合はクッションまたはテーブルベッド上に狙い点を定めるという方法があります。これは手球と的球が近い場合しか使えない方法ですが、的球の接触点を見て狙うと厚めに外してしまいがちなので、ラシャの傷や汚れなどに狙い点を定め、これに向かって撞けば迷う事がないというわけです。この方法を使う場合、必ず的球側から手球を見て、どこに手球の中心が来るべきかを確認しておく事が重要です。
ただし、この方法が有効かどうかは人によるようで、普通に厚みで見たほうがよい人もいます。いずれにしても、ボールの直径を正確に感覚で把握しておく必要があります。
薄いカットが苦手な人は、一度試してみてください。

今回の配置紹介の中で使用した「シューティングナビ」はキューショップでも取り扱っており、発売当初から安定した人気があります。
初心者の方は勿論、中・上級者の方でも苦手な配置を克服するために利用できます。
スタッフ野田も、自分で感じる厚みをシューティングナビで実測した厚みと比べたりして狙いが分かりにくい配置を練習していました。どこを狙うべきかを正しく把握するためのスグレモノです。

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