こんにちは、スタッフ野田です。
羅立文(ローリーウェン)プロによる14-1解説動画その24です。
例によって1球ずつ次に何をしたいかを説明しながら撞いてもらっています。
今回から3回にわたって、ブレイクボールが非常に厚くなってしまった場合、つまり、手球・ブレイクボール・ポケットが一直線に近い配置になってしまった場合の対処法をご紹介します。
では、早速動画をご覧いただきましょう。

力加減を間違えてブレイクボールが非常に厚い配置になってしまったという経験は、14-1をよくプレーしているという方には少なからず経験があると思います。
完全に真っすぐになってしまった場合に攻める方法は、わずかな穴ブリで強打するか、ブレイクボールをバンクしたりラックに当ててキスインさせるといったミラクル技を駆使するしかなくなるのですが、少しフリがあるなら何とかなる場合があります。ただし、ラックを強く割ることはできず、ランアウトが可能になるかどうかはラックから離れた数少ない的球の配置次第となります。
さて、今回はブレイクボール⑪に対して手球はわずかに左フリ、つまり強く撞けば何とかラックに手球を当てることは可能といった配置です。
ブレイクボールがラックから離れているので、ゆっくり撞いてしまうと手球はラックに当たりません。そのためキュースピードを上げて手球を弾かせてやる必要がありますが、厚いために弾かせるだけでは手球がラックに向かうスピードは遅く、ラックは崩れません。そのため押し球にして手球に前進するスピードを加えてやり、その力でラックを崩します。
これをうまく加減するのはなかなか難しいのですが、手球のジャンプを利用するという方法があります。押しの撞点で強く撞くと手球がジャンプするのですが、少しキュー尻を上げて意図的にジャンプの度合いを大きくすれば手球は自動的に弾けるので強い押しをかけてもラックに当てることができます。
これは手球がわずかでもテーブルベッドから浮いた状態で的球にぶつかれば、その瞬間はラシャとの摩擦がないので手球にどんな回転がかかっていようとも必ず接線方向に向かって動くことを利用したものです。
そしてラックの角に当てて、ブレイク後にフットレール側に落ちてくる的球を狙います。ラックの下の方に当たるので、スクラッチはほぼありません。
前述の通り、その後にランが続くかどうかは的球の配置次第となります。

ブレイク後の配置です。
手球はラックの下から2列目の⑤に当たり、②と④がフットレール側に落ちてきました。
④は右手前コーナーにほぼ真っすぐです。
さらに③がセカンダリーブレイクにちょうど良い位置にあります。
ですので、④→②→③ブレイクという順でランを進めます。

④をストップショットで入れて②に適度なフリを付けました。
次に③が左フリになるようにポジションしてブレイクに備えます。
③への力加減は重要で、③でうまくブレイクできるかどうかでこのラックが取り切れるかどうかが決まると言っても過言ではありません。

②を入れたところです。
③に左フリを付けることはもちろん、手球が長クッションにくっつかないように気を付けます。
③でブレイクするのですが、保険球がないので手球が埋まってしまわないように強めの押しをかけます。同時に少し左ヒネリをかけていますが、これは③に対して順ヒネリになるのでポケットしやすくなることと、手球が長クッションに入った際にテーブル中央に向かって動くことが理由です。

③を入れたところで、ラックは見事にバラバラになりました。
残ったクラスターはラック範囲付近にある⑤⑨⑮のみです。
ここから取り切る方法についてはこれといった正解はなく、人によって違ってきます。
例えば、⑥→①→⑭の順で取りに行くという方法があります。これは長クッション際にある的球を早目に処理しておくことに主眼を置いた方法です。そして⑭から少し手前に引いて⑨を左フリにすれば、⑨を入れながら⑤⑮をブレイクすることができます。
さて、羅プロは⑬を左手前コーナーに入れて、ワンクッションで手球を⑤⑨⑮クラスターに当てにいくことを選択しました。これはもちろんクラスターをブレイクして取り切りをしやすくするためですが、ブレイク後に手球がフットスポット付近に留まって次に複数の的球を狙えることができるので、安全にプレーできるということも大きな理由になっています。
ただ、実際に試していただくと実感できるのですが、ワンクッションでこのように距離のある的球に手球を当てることは大変難しいのです。今回の場合は保険の⑩があるので、⑤・⑮のどちらに手球が当たってもOKなのですが、どちらにも当たらずに抜けていってしまうと、次のショットが大変難しくなってしまう可能性があります。
何でもないようなショットに見えますが、このような技術に秀でているのが羅プロの大きな強みであり、14-1の名手と言われる所以なのです。

⑬を入れ、⑤⑨⑮クラスターを散らしました。
前述の通り、クッションから離れているクラスターにワンクッションで正確に手球を当てることは大変難しいのですが、羅プロには絶対にクラスターに当てることができるという確信がありました。それだけ手球のコントロールに自信があるわけで、その自信は過去の膨大な練習・実戦の経験から来ているのです。
狙い通りクラスターを散らすことに成功しましたが、まだ油断はできません。
ラック範囲の左寄りに的球5個の密集地帯があり、これを片付けなければなりません。
特に⑤が⑨の左コーナーへのポケットコースを妨害しているブロックボールとなっているのが問題です。
ブレイクボールの候補は4個もあるのですが、取り切る際に邪魔になっているものが含まれているので、取り切りは決して簡単ではありません。
ここで羅プロは⑧を入れて、その後にクッション際の⑥⑭を取りに行きます。
前述でスタッフ野田がクッション際の的球を早目に処理したい旨をご説明しましたが、クッション際の的球は片側のフリしかないので有効な手球のポジション範囲が狭く、手球を動かせる自由度が限られ、しかも強く撞くことはできないなどの制約があるのです。
的球5個の密集地帯は放っておいて大丈夫なのかという疑問を持たれた方がいらっしゃるかもしれませんが、羅プロはそれもちゃんと考えています。
⑥→①→⑭→⑩の4個をグループAと考え、密集地帯の5個をグループBとすると、グループAを片付けた後にグループBを処理しにいくためのポジションに手球を導く的球として、⑦があるのです。つまり、グループAの最後の的球⑩に厚めに出して、次に⑩から⑦を左サイドに狙うポジションを取り、⑦からグループBの取り切りを始めるというものです。
このように2つのグループをつなぐ的球をコネクティングボール(接続球)と呼ぶのですが、これは14-1をプレーするうえで重要な考え方の1つです。

⑧を入れたところです。
手球は⑥に対してまっすぐになりました。
次は①から⑭に出すことになるので、⑥から少しだけ引いて①を薄めにして、楽に⑭に出せるようにします。

⑥を入れて①へポジションしたところです。
①を薄めにしたので、手球が大きく動いて⑭へポジションすることになります。
⑭があまり厚くなるとマズイので、力加減に気を付ける必要があります。

⑭へポジションしました。
ちょっと厚すぎましたが、⑩に出すことはできそうです。
もしもっとフリが少なくなってしまったら⑩にポジションすることはできないので、次に⑦もしくは⑤に狙いを変更することになったでしょう。

⑩へポジションしたところです。
もう少し強めに撞いて、押しを抑えれば安全に⑩に出せましたが、ちょと危なかったです。
危なかった理由は手球がちょっと遠かったため、撞点・力加減が不安定になってしまったのではないかと思います。
14-1に限らず、ビリヤードではちょっとしたことが大きなトラブルの原因になることがよくあるので、簡単な配置でも舐めてはいけません。

⑩から⑦へ厚めに出したところです。
少し右フリになっていますが、これは左フリになったら手球が⑮に当たって残りの配置が面倒になる恐れがあるからです。
⑦の後は、⑫→⑨→⑤として⑮がブレイクボールという想定です。
ちなみにこの取り切り順は⑧を入れた際にすでに羅プロの頭の中にありました。
⑦から⑫へ真っすぐか右フリに出したいところです。

少し力加減が強くて⑫にはわずかに左フリが付いた配置になりましたが、手球を大きく動かさずに止められる範囲に収まりました。
もしもっと大きな左フリが付いてしまったら、手球を⑨に当てて、⑤→⑨→⑮とすることになったでしょう。

⑫を入れて⑨にほぼ真っすぐの位置にポジションしました。
ここでは⑨が右フリにならないように気を付けます。
もし右フリになったら、ゆっくり撞いて手球を前に出しながら⑤に当てて、⑤を左コーナーに
狙うでしょう。ただ、その際に⑤へ適度なフリを付けるためにはかなり繊細な加減の調整が必要になります。

⑨を入れて⑤を右フリにポジションしました。
理由は次の配置で説明しますが、この位置は理想的と言えます。

完璧な力加減でブレイクボールにポジションしました。
良い位置にポジションできたのは、力加減が良かっただけではなく、キーボール⑤へのポジションが優れていたことが大きな要因です。
⑤からブレイクボール⑮へは手球が⑮のシュートラインに平行に近いコースをたどるので、ポジションミスする可能性を低く抑えることができるのです。
⑨を引きで入れて、⑤を左フリにして2クッションで⑮にポジションすることも可能ですが、その場合は手球のコースが⑮のシュートラインを直角に近い角度で横切ることになり、微妙な力加減の調整が必要となります。(その場合の手球のコースをグレーの線で示しました)
ブレイクボールへのポジションを失敗したら、それまでの努力がすべて水の泡となってしまいますので、キーボールからブレイクボールへのポジションは最も重要なポジションプレーだと言えるかもしれません。
もし複数の選択肢がある場合は、できるだけ安全な方法を選びましょう。
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