スタッフ野田です。
前回に続いてナインボールのラックについての解説です。
配置図は前回と同じものを前提として使用します。

前回はヘッドボール①への対処法の解説でしたが、今回は①がブレイクでポケット出来る可能性が高い場合、つまり手球を②へポジションできるようにコントロールすることについての解説です。
①・⑨は定位置ですが、それ以外の的球はラックのどの位置に置かれるかが分かりません。
そこでラックのどこに②があるかによって対処方法が変わってきます。

まずラック配置図の②の位置にある場合、これは右のサイドポケットより少しフット寄りに向かって動きます。
スピードはそれほど速くないなので、クッションに入った後にヘッドレール近辺までくることはあまりありません。
対処としては少し手球に引きをかけておけば、サイドポケットかフット側のコーナーポケットに狙える配置になる可能性が高まります。
反対側の③の位置にある場合は左のサイドレールにそこそこのスピードで入り、可能性は低いですが反対側のサイドポケットに入ることがあります。ですので可能なら次の③にポジションすることも考慮します。
サイドにポケットしなかった場合は長・長と2クッションしてヘッド側のエリアに向かって動きますので、手球はあまり強く引かないようにすればヘッド側に狙える配置になることが期待できます。

⑨の両側にある的球はウイングボールと呼ばれていますが、④の位置にある的球は多くの場合フット側のコーナーにダイレクトにポケットします。したがってこの位置に②がある場合は③の位置を予測してポジションすることになります。
反対側の⑤の位置にある場合はかなりのスピードで図のようにスリークッションしてヘッド側に向かいますので、手球がフット側にいかないようにします。

⑥の位置にある的球はフットレールに反射して右側のサイドポケット方向に動きます。
⑦の位置の的球は反対方向でフットレールに向かいますが、そのスピードはかなり遅くなり、フット側に留まる可能性が高いです。この位置に②があるなら手球に押しをかけてフット側に止まるようにします。

最後尾にある⑧の位置にある的球は、フットレールからやや右側に跳ね返った後、ヘッド側に向かいます。この動きはかなり早いので、ヘッド側のコーナーにポケットする可能性もあります。
さて、②から⑧までの位置にある的球の動きを解説してきましたが、これらはすべて途中で他の的球にぶつからない場合の話です。
実際には動いている途中で手球と的球、もしくは的球同士が衝突して予測不能な配置になってしまうことが多いのです。
今までの動きを図にまとめると以下のようになります。

これを見ると分かる通り、手球をテーブル中央付近の安全地帯に留めれば、的球に蹴られてしまう可能性が低いことが分かります。
テーブル中央付近に手球を留めることがランアウトに有効であると言われる理由は、テーブル全体の範囲をカバーできるという以外に、的球に蹴られる可能性が低いという理由もあるのです。
一方で、的球の動くコースが交差する点が幾つもあります。
この交差する点で的球同士がぶつかる可能性は、的球が動くスピードによって異なります。
中心の⑨は当然ながら最も動きにくいです。
①・③・⑦は他の球の動くコースと交差する点が少なく、図示された通りのコースを動く可能性が高いです。
またウイングボール④も他の球に邪魔されずに真っすぐコーナーポケットに向かうことが多いのですが、他の球と衝突する可能性の高い的球もあります。

上図に示したA・B・Cの3点が衝突危険地帯です。
まずAはゆっくり動く②に⑧や⑤が当たる可能性が高いです。
Bはポケットに向かうウイングボール④が⑥と当たることがありますがその可能性は高くなく、それよりも高速で動く⑤が⑥に当たる可能性が高いです。
そしてCでは比較的ゆっくり動く⑥に早く動く⑧がぶつかるというものです。
⑤と⑧は高速で動きながらテーブルを縦断するように動くので、他の球とぶつかる可能性が非常に高いです。
また、手球は安全地帯に留まることを前提にしているので考慮していませんが、現実には強く撞いたうえで手球をこのエリアに留めるのはプロでも至難の業なのです。
そのためブレイクで散った的球が手球に当たって予想外のところに行ったり、手球がスクラッチしたりすることがあるのはある程度致し方ないともいえます。
ラックシートを使用しても必ずブレイクで的球がポケットするとは限りませんし(ボールの摩耗などによる影響があります)、こういったことを考慮した結果が裏目に出る事もあると思いますが、まったく無為無策でブレイクするよりはよほどマシです。
現在、特に国際的なトーナメントではスリーポイント、ブレイクボックス、ナイン・オン・フット等といったブレイク後の定型パターンを防ぐためのルールがいろいろ講じられていますので、そういったトーナメントに参加するプレーヤーたちはこういったルールへの対策も考えなければならず、なかなか大変だと思います。
これまで説明してきたことと同様の分析をテンボールのラックでも行なえば、色々と対応策が考えられます。
ナインボールではウイングボールが高確率でポケットされるのですが、テンボールではそのような的球がないので①をサイドにポケットするために手球を①の真正面ではなく少しずらして当てる「カットブレイク」という方法があります。
しかしこれも確実に①がポケットする保証はなく、手球のコントロールが格段に難しくなるというデメリットがあります。
残念ながら普通の人間の能力ではブレイクで確実にランアウトの配置を得るようなことは不可能で、どうしてもある程度「運」に頼らざるを得ませんが、それでもこういったことを考えればゲームの勝率やマスワリできる確率が上がるでしょう。




